今現在… 投稿者:40代女性
その、黒いゴミ袋のようなガサガサと動くモノを見たことは、今までに何度かありました。
始めは高校生の時、田舎道に新しいバイパスが出来る前の舗装された道を自転車で帰るのですが、火葬場の跡地を通り、まだほとんど外灯も無く暗い夜道川の流れと田んぼを吹き抜ける強い風の音に混じって遠くに黒いゴミ袋のようなものがガサガサと音を立てていました。
暗いし遠いし、大きさは定かではありませんが、いつも暗くなってからその場所を通るとあるのです。
結局何だかわからないままでした。
15年ほどして、がらんとした大型スーパーの屋上駐車場で又それを見ました。
ああ、アレだなと思いましたが、夜だし遠すぎてわかりません。
近づくと、何もありませんでした。
そして、今。
外廊下の蛍光灯が切れて、暗いマンションの部屋のドアスコープから
アレを見ています。
ガサガサという音がだんだん大きくなっているんです。
今、チャイムがなったんですが、私はどうしたらいいのでしょうか?
死んだはずのA 投稿者:20代男性
霊の存在を信じない私ですが、この話を聞いて以来、一人でバイクツーリングに出かけるのを本気でやめました。
これは十年ほど前、私がバイクに乗り始めた時にバイク仲間から聞いた話です。
心の準備を。
バイクツーリングのメッカとして有名な山が関東某所にあります。
その山の頂上付近には神社があって、そこの駐車場から見る景色がよく、バイカーたちの休憩場になっているのです。
バイカーのA氏(30代男性)はいつものように、休日にこの山に出かけていきました。
山の麓には大きな鳥居があって、彼はその日も鳥居の前でバイクを降りてから一礼しました。
「今日もまたお邪魔します。よろしくお願いします。」
律儀な彼は毎度のように、ここで一度お参りしてから山道へと入ることにしていました。
眺めのいい、幾つものヘアピンカーブを抜けて、難なく頂上の駐車場へと辿りついた彼は神社にお参りしてから休憩をとっていました。
夏が終わって少し肌寒いような季節になり、日が暮れるのも早くなってきた頃です。
その日は出発がいつもよりも遅かったので、少し休憩したら谷のあたりはすっかり暗くなり始めていました。
真っ暗になる前に山を降りたかったAは、少し追われるように帰途につくことにしました。
「じゃあ、どうもお先に!」
と頂上の駐車場にいた他のバイカーたちが出発していった後、一番最後にAもエンジンをかけて下り坂へと入っていきました。
この日は思いのほか暗くなるのが早く、街灯のない道は2つ、3つとカーブを抜けていくうちにどんどん暗闇が迫ってきます。
A氏は少し焦りながら、スピードを出して次のヘアピンへと差し掛かりました。
少し難しいコーナーを抜けて、谷にかかる橋を過ぎるとそこからは鬱蒼とした森でした。
もうここまで来る頃には、ほとんど真っ暗な道を進むことになってしまったのです。
「ちょっとマズイな」
とアクセルを握る手に力が少し入ってきた時のことです。
ヘアピンカーブを抜けて直線道路に入ったとき、サッと過ぎていく左の木の影に白い綿のようなものを見かけた気がしました。
「霧が出てきたのかな。」
早く麓へ帰りたい彼はそれでもまた少しスピードを上げて次のヘアピンへと入っていきました。
カーブを抜けて直線道路に差し掛かったとき、今度は右手側に白い綿のようなものがふわーと見えたのです。
「あれ。さっきもおんなじようなもの見たけど?」
彼は少し不思議に思いながら、次のヘアピンを抜けてまた直線へと入りました。
すると、また白い霧のような塊が横を過ぎていきました。
次のカーブをぬけて直線に入ると、今度ははっきりと真っ白い洋服の女性がこちらに手を挙げて立っていたのです。
彼はとっさにそれを避けると、背中にぞっとするものを感じました。
「なんで、うそだろ。こんな時間にここで人がいるなんて。どう考えてもおかしいよ。」
人家なんて一つもなく、女性が立っている場所は一歩踏み外したら谷底へ落っこちるような場所です。
首も腕もガチガチになりながら、それでも彼はスピードをあげてコーナーを抜けていくと、また、さっきの女性がいたのです。
今度はもっと真ん中よりに立って、明らかにこちらに向かって手を挙げていました。
「ごめんなさい!止まれない!」
彼は心の中で叫びながら、またその女性を避けてバイクを走らせました。
その白い女性の横を通り過ぎるとき、
『待ってよ』
という声が耳元でしました。
彼はついに怖くなって、さらにスピードをあげます。
50キロ、60キロ。
もうこれ以上スピードを上げたら曲がれないというところまでアクセルをふかして、次の直線に差し掛かったとき、またその白い女性が立っていたのです。
限界までスピードをあげて女性の横を通り過ぎてまたヘアピンを抜けると、次の直線には何もありませんでした。
「はぁ~。よかった。よかったよ~。見間違えたのかな。あそこに人がいるわけないからなぁ。」
自分に言い聞かせるようにスピードを緩めてふとバックミラーを見たその時、さっきの女が髪を振り乱して、四つん這いになって追いかけてきたのです。
『待てぇ、待てよ!』
しわがれた声で、その表情は般若のように凄まじく、彼はこれ以上スピードを出せば飛び出してしまうという限界までスロットルをあけてコーナーを曲がって山道をすべりおりました。
『待て!待て!』
信じられないスピードで女が迫ってくる。
5メートル、4メートル、3メートル。
どんどん距離が短くなってくる。
その女の手がバイクの後ろに届きそうになった時、彼は麓の鳥居を通り抜けたのです。
その瞬間、女もいなくなっていました。
「冗談だろ。オレ、何にもしてないぞ。」
A氏は震えが止まらなくなって、街までくると近くに住んでいる友人のBへ電話をかけました。
「ちょっと、家に寄るから少し休ませてくれないかな。こういうことがあって、もう運転できないよ・・・」
といきさつを話し、
「あと10分くらいで行くから」
と電話をきってBの元へと急ぎました。
電話をもらったBは彼の到着を待っていましたが、10分経ってもAは来ません。
「遅いな。渋滞してんのかな。お腹空いてるだろうから何か作ろうか」
と思っていたら、ピンポーンとインターフォンが鳴る音が。
「はーい。ちょっと待ってよ」
と鍵を開けに向かったとき、Bの電話が鳴りました。
それは、AとBの共通の友人Cからでした。Cはひどく焦った様子で
「お前、聞いたか?今さっき、家族から電話あって、Aが交通事故で亡くなったって」
「えっ!Aが!だって、今うちに来るってさっき電話もらったんだけど・・・」
ピンポーン。ドンドン。
「おーい、B。オレだよ、オレ。Aだよ。今着いたよ」・・・・
死者のパーティー 投稿者:40代女性
私は若い頃、山の上のリゾート施設に勤めていました。
当時はバブルの終わりの頃で、医者や弁護士・企業のボンボンなど羽振りの良い方が多く見えていました。
ある時、いつもは飛行機で見える企業の2代目が、珍しく外車を運転して深夜にご到着されました。
クローズを前にひとりでフロントに立っていた私を相手に、そのお客様は楽しそうに話し出されたのです。
「いやあ、酔狂な人たちもいるもんだよね。途中の大きな道沿いでお誕生会をやっている人たちがいたんだよ」
「この夜中に、道でお誕生会ですか?」
「陽気な人たちでね、おいでおいでと誘われてさあ。お花もいっぱい飾ってあってきれいだったよ」
このお客様は、ご自分の下着も洗ったことがなくいつもランドリーに出されるほどの育ちの良い、ある意味世間知らずな方でした。
それから私は、その場所の近くにはお誕生会をする人が集うようなスペースやまして建物なども無く、そこには地元でも有名な自殺の名所の大きな橋が架かっていること。
お花は、誕生日ではなく亡くなった方へのお供えだと言うことを、淡々とお伝えしました。
すると、
「これ、どうしたらいいかな?」
お客様は背後から枯れた花束を取り出されました。