ある所に、
一人暮らしをしていた大学生の男がいた。
その男は、
ごく普通のアパートに住んでいたのだが、
たまにおかしなことが起こった。
大学から帰ってくると、
カーテンの形やゴミ箱の位置などが、
微妙に変わっていたのだ。
それに加え、
最近は、
誰かにつけられている様な気もしていたその男は、
流石に気味が悪くなり、友人に相談することにした。
男は友人に、
警察に相談しようか迷っていると話したが、
その友人は、
「なら、大学に行っている間、
ビデオカメラで部屋を隠し撮りしておいて、
もし、ストーカーが部屋に入っていたら、
そのテープを持って、警察に行けば良いんじゃない?」
と、語った。
その男は早速、
翌日に自分の部屋にカメラをセットし、
録画状態にしたまま、大学へと行った。
そして、
大学から帰って来た男は、
久しぶりに部屋に違和感を感じた。
これは、もしかしたら、
何か映っているかもと思い、
早速、録画しておいたカメラを止め、
確認することに。
最初の方は特に何も映っていなかった。
「なんだよ、俺の勘違いかな。」
そう安堵しかけたその時、
カメラから知らない女性が、
部屋に入ってくる映像が流れていた。
しかも、その手には包丁が。
あまりの恐怖に驚いた男は、
すぐさま友人に電話を掛け、
「マジで映ってた!やべー。」
と、若干興奮気味に友人に、
映像を見ながらその女の行動を逐一報告した。
ゴミ箱を焦ったり、
服の匂いを嗅いだり、
今まで感じていた部屋の違和感の正体に、
背筋が凍る思いにもなったが、
これで警察も動いてくれるはず。
そう思った男。
そして、
映像の中の女は、
部屋の押し入れに入って行った。
「こいつ、マジか。
押し入れの中まで漁っているのか。」
友人と電話をしながら、
中々出てこないな、などと言っていると、
映像の中で、
今度は、別の人物が、
部屋に入って来た。
その瞬間、男は声を詰まらせた。
なんと、
その映像に映っていたのは、
自分だった。
そして、
おもむろにカメラを手に取り、
録画を止めた自分。
そこでビデオは終わっていた。
【解説】
部屋に入って来た女が、
押し入れに入った後、
出て行くことなく、
自分が部屋に戻って来たということは…
その映像に映っていた女は、
まだ包丁を持ったまま、
部屋の押し入れに入っているということ。